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古今著聞集
七/能書
延喜の聖主、醍醐寺お御建立の時、道風朝臣に額書参らすべき由仰られて、額二枚お給はせけり、一枚は南大門、一枚は西門の料也、真草両様にかきて奉るべき由勅定有ければ、仰にしたがひて、両様に書てまいらせたりけるお、真に書たるは南大門の料なるべきお、草の字の額おはれの門にうたれたりけり、道風是お見て、あはれ賢王(○○)也とそ申ける、其故は、草の額殊に書すましておぼえけるが叡慮にかなひて、かく日比の義あらたまりてうたれける、まことにかしこき御はからひなるべし、それおほめ申なるべし、