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続古事談
一/王道后宮
堀川院は末代の賢王也、なかにも天下の雑務お、殊に御意に入れさせ給たりけり、職事の奏したる申文お、皆めしとりて、御夜居に、又こまかに御覧じて、所々にはさみがみおして、このことたづぬべし、このことかさねて問べしなど、御手づからかきつけて、次日職事の参りたるに、たまはせけり、一返こまかに、きこしめす事だに有がたきに、重て御覧じて、さまでの御沙汰ありけむ、いとやむ事なき事也、すべて人の公事つとむるほどなどおも、御意に入て、御覧じ定めけるにや、追儺の出仕に、故障申たる公卿元三の小朝拝に参たるおば、こと〴〵く追いれられけり、去夜まで所労あらむものヽ、いかでか一夜の内になおるべき、いつはれる事也と被仰けり、白河院は此お聞食て、きくとも、きかじとぞ、おほせられける、あまりのことなりと、思召けるにや、