[p.1281]
平家物語

新院ほうぎよの事
上皇〈○高倉〉は〈○中略〉内には、十かいおたもつて、じひおさきとし、ほかには、五常おみだらせ給はず、れいぎお正しうせさせおはします、まつ代のけんわうにておはしければ、世のおしみ奉る事、月日のひかりおうしなへるがごとし、〈○中略〉
こうえうの事
あんげんの比ほひ、御かたたがひの行かうの有しに、さらでだに、けい人あかつきおとなふこえ、明王のねふりおおどろかす程にも成しかば、いつも御ねざめがちにて、つや〳〵御しんもならざりけり、いはんやさゆる霜よの、はげしきには、延喜のせい代、国土の民共が、いかにさむかるらんとて、よるのおとゞにして、御衣おぬがせ給ひける事などまでも、思召出て、我帝徳のいたらぬ事おぞ、御なげき有ける、〈○下略〉