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古事談
一/王道后宮
鳥羽法皇登山御幸之時、前唐院宝物御覧之時、諸人不知事有三け事、古老僧徒猶不分明雲々、而少納言入道作三事申之、一には杖之さきに円なる物の綿ふく〳〵と入たるお付たる物有、人不知雲雲、通憲申雲、是は禅法杖と申也、修禅定之時、僧の所痛あれば、是にぶ腹胸などおつかへて居物也、二には、鞠の様に円なる物のちひさきが、投れば声有ものなり、又人不知之、通憲申雲、是禅毱と申物也、同修禅之時、眠などするに頂に置てねふり傾く時は落ば鳴也、それにおどろかん料の物也、今一は木の十文字に差たる物、人不知之、通憲申雲、是は助老と申物也、老僧などのよりかヽる物也、大略脇足体の物候雲々、諸人莫不感歎雲々、