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百家琦行伝

窻村竹
東武青山熊野横町に、憲の村竹といへる老人在けり、〈○中略〉或商人の慫慂になりて、やう〳〵に成長、つひには俚き野菜商人どはなりにけり、幼年より、書お見る事お好のあまり、一日商ひし、いささかの利徳おうるときは、且(まづ)当日の米お買、残れる銭は私に貯蓄おき、書お求めて是およむ、竟に一日清かなる衣服お著し事なく、家は破れかたぶきたれども厭ず、〈○下略〉