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孝義錄
十八/陸奥
孝行者治郎左衛門
治郎左衛門は若松の城下竪三日町にすみて、鞘ぬる事お業とせり、むまれつき質直にして、家業におこたらず、もてきたりてあつらふる人の、貴賤おへだてず、前後のついでお乱さず、しかもはじめに約せし日おたがへねば、おのづから業も多くなり行き、事たらいたる人などは、其意お感じ、よき物などいひつくる折は、前かたに祝儀などいひて、米金の類おとらするに、かたく辞してうけず、たゞ其業の料より外おとる事なし、