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松隣夜話

謙信〈○上杉〉余事に替り、武篇の出入は、深く被遂評議、御念入候、〈○中略〉先七組衆、十一人衆、廿一人衆お命じ玉ひ、僉儀の土被仰出けるは、出雲〈○森〉は感状数多し、殊に普代覚へ者、下座に可著謂なし、伊賀〈○槙〉は感状の数は劣り候へども、日の内に十一度迄、一番鎗お合せ、九人侍お討、天下無双と雲感状お取候事、是名誉なれば、是も下座に難著、両面に別れ対座可有、其上双方口説に不及、謙退お第一にして強みある論談、就中出雲初段の酬対慇勤の様子、后御案結構の式対なりとて、両人同坐に被召、出雲には信国の刀、伊賀には大原実守の脇差お玉はる、作両腰、謙信度々手づから人お切り、刃金よしとの御言葉あり、