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常山紀談
十六
上杉家禄知削られし後、士多く暇お取て、立去けるに、慶次〈○前田〉お七八千石、一万石お以て招く大名あり、慶次われ此度の乱に、諸大名表裏の心見限たり、景勝ならで、わが主君とすべき人なし、扶持し置てたまはれとて、五百石の禄にて、民間に引込、風月お楽しみ、歌楽に心お寄せ、源氏物語お講じて、世お終れり、