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近世奇人伝

太田見良 猩々庵
太田見良、宇資斎、伊予大洲加藤侯の士也、〈○中略〉侯の翁主(ひめ)、官家に嫁し給ふに召れて、侍医となる、養生の法おもて、しば〳〵諫れども用られず、故に脚疾に托し、禄お辞して退く、此後永く家居し、幗お蹈ざるは、此言お実にすとなり、自往ずといへども、病客門に充て、医療おこふ、学生も亦あまた従ふ、其清白の一事は、蘂物において、極品お撰て価おとふことなく、その言にいはく、もし時の価おしれば、おのづから鄙吝の意生じ、調剤の聞、其価貴きものは、減ずるに至る、わが浅ましきおおもふがゆえに、つゝしみてとはずと、