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明良洪範
二十四
春日局
或時夜に入て平川口お二位局通られしに、御本丸御目付より断なし迚、御門お開かず、春日なりと名のりけれ其、御番頭初鹿野伝右衛門雲やう、春日にても天照太神にても、御断なくしては通し難しとて、川風に吹れてに時計り待て、やう〳〵御門お開て通しける、猶廟〈○徳川家光〉の仰せには、なぜ遅かりつると御尋ありければ、局はかヽることにて、遅滞致したり、私が名お申たれば、春日にもせよ、天照太神にもせよ、断なくては通し難しとて、堅く守り申候、ひとへに御威光の程有難く覚へ申候と申上ければ、上にも笑はせ給ひ、門の出入は固く申付置ゆへ、さも有そとなり、翌日局より菓子お平川口御番所へ贈て、其勤労お慰まる、