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東潜夫論

倹約と雲ことは、当時諸侯の流行り言ばなり、随分金財おば相応に倹約する国もあるなり、然ども事お省くことお知らず、当時諸侯の国文事、にも非ず、武備にも非ず、昔より仕来りしこと甚だ多し、其一二お挙げば、欧初め、鼓初め、舟乗り初め、鷹狩初め、此等のこと初めみな益なきことなり、次に番警固入らぬ処に甚だ多し、先儒の言し如く、出行の炉簿も大勢にして、軍陣の備の如し、是類のこと皆幕府より殺ぎすて玉ふべし、連歌師、碁打、将基指、何の用かあらん、皆省くべき役なり、画工なども写真形画は用あり、水墨破筆は国家の用にたヽず、官の画師には此お禁じ玉ふべきことなり、