[p.0059][p.0060]
古今著聞集
三/政道忠臣
昔は人の装束もなへ〳〵としてぞ有ける、されば斎院の大納言の消息に、先代の時、節分袍借献など書れたんなるは、節会の袍とて、ほろ〈○ろ、原作の、今拠一本改、〉〳〵とある物の人にかすなどが有けるとぞ、後朱雀院の御時、旬に参たりける上達部お御覧じて、衣日資房卿の蔵人頭也けるお召て、昨日公卿の装束お御覧ぜしかば、以外に袖大に成にけり、かくては世のついへなるべし、いかゞせんずると、右大臣〈○藤原実資〉のもとへ、いひあはすべしとみことのり有ければ、則申されければ、おとゞ申給けるは、みなの公卿に此よしお承りて、畏り申さば、さすがに右大臣御けしきかうぶりたりと聞えば、人もなおり侍なんとはからひ申されければ、そのさだめに披露有て、右府閉門して、畏のよしおせられければ、人みな聞おそれて、装束の寸法すべられけり、