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東照宮御実紀附錄
二十
江戸御遷の初、御玄関の階は、船板にてあまり見苦しければ、本多佐渡守正信改作らんと申せしに、いらぬりつばだておするとて、聴せ給はず、その後、府城造営ありしにも、目につくばかりの金具はなかりし、台徳院殿、和田倉辺の櫓のはふに、金の金具用ひ給ひしよし、駿河に聞えければ、俄に一夜のうちに、毀撤せしめ玉ひしとか、駿城御修理ありし時も、本丸のまはりは、板塀かけられしが、二丸にある老臣等の邸宅などは、竹垣お結渡して置せ給へば、あまりに失体なりとおもひ、己が自力もて、板塀にかけかへんと伺ひしに、いらぬ事なり、そのまゝになし置との上意にて、後々までに、竹がきにて有しとなん、