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東照宮御実紀附錄
二十
板坂卜斎侍座せし時、壼に入りし人参お賜らんとて、両の御手もて下されけるに、御違棚に奉書の紙ありしおみて、一枚玉ひ、是に包まんとせしに、それは大名どもへ書肬お遣すに用ゆるなり、えうなき事に遣ふものならず、人参は良薬にて、女等なくてかなはぬものなれぱ、取らするなり、奉書は一枚とおもふべからず、大なる費なり、羽織脱てこよとの上意にて、羽織に受て、奉書おば元の如く、御棚に返し置しとぞ、卜斎も年頃御側にありしが、この時ほど、面に汗して迷惑せし事はなかりしとて、後々人に語りしとなん、