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常山紀談

利安〈○栗山〉若き時は善介といひ、中頃は四郎兵衛といふ、長政〈○黒田〉に筑前お賜りし時、名島の城に長政居て、左右良の城に利安お置れけり、禄一万五千石極めて倹なる人なり、人の衣服の美麗なるお見ては、褻晴といふ事の有といひ教へ、又価高く馬お購ふ者あれば、さばかりの馬も二匹の用おばなさじ、何とて無益の費するぞと戒めけり、されども事に臨て金銀お惜むの心なし、従者おいたはり憐み、貧乏お助る事、尋常の人に大に踰まされり、