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明良洪範続篇

或時大火有し後に、増上寺の竜鐘も其余煙にかヽりて、響きあしく成たる故、鋳直し申すべきの所、此節御倹約の時節なれば、彼是と奉行中より存寄お申立られしに、但馬守〈○土屋数直〉聞て、倹約は天下の法令なれども、鐘などは末代に残る者なれば改めらるべし、無益の事には毛末も厭ふべき也、但し後代の戒めにも、九の乳はなくても有なん、唯其形お替て九の乳おば彫らせよ、響は九の乳には因べからずと下知有し、