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千歳のもとい
倹と吝とは間違ひやすき也、倹は美徳、吝は悪徳なり、倹とは物お小じめにするお雲、心も小じめにせざれば放に成行、身の調度も小じめならざれば奢に流る、書経に位は期せざれども驕ると雲は、誰も其始位高くなりなば、たかぶらむと思ふ人もなけれ共、位高くなりて、此心小じめならざれば、いつしか驕慢に成行、富は期せざれ共侈とは、是、も始富たらば侈らむとはおもはね共、富にまかせて飲食衣服より、すべで身の調度小じめならざれば、いつかは奢侈に流行お戒し詞也、小じめと雲は、物に節度お立てたる事おしり、無用の費おはぶくお雲、もし其恵むべく施すべきにのぞみては、一毫も惜むことなぐ、ほどこしめぐむべきこと也、其施し恵むが為に、かねて無用お省て、有用お足らする也、