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窻の須佐美追加

洞家の僧隠遁して芝辺に住けり、年老て疾に伏しかば、甥なる士常に来たりていたはりけり、やゝ重りければ、予が方に招き入て看病せんと雲へど、きかざりけり、一同に雲やう、小き餅お二百ほしきと雲ければ、その如くして与へけるに、思ふ事有間、女とく帰れとて、内より戸おさし固めけり、明朝往て戸お敲けれど、答ざりし故、おし放ちて入りて見れば、かの餅に金一づヽもみ込、さて四十八ばかり喰しが、そこにて死したりと見へて倒居たり、此、金お跡に残さん事の口おしくて、悉餅にうめて腹中に入おかんと思ひけるにこそ、かゝる執心深き者も有ける事にこそ、