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花月草紙

ある吝嗇なるもの、ことしはことにものつひやしぬとて、および折りてかぞへたてぬ、まづ春より秋まで、かのいたづきによてのめる薬もかばかりなり、それにかゝる事もありしなど、かぞへつゝいふお、つく〴〵ときゝいし人が、いとさりがたきがうへに、君が身につきたるものひとつあり、是おいかで費といはんといへば、なになるかとゝふ、薬のみ給はずば、かくけふなげき事もえいひ給はじ、かくいひ給ふは、薬のめぐみなれば、それにむくい給ふお費と心得給ふかといひき、かのひとは、これお費とせちに思ひけんかし、