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予章記
弘安四年蒙古襲来す、〈○中略〉通有〈○河野、中略、〉伯父伯耆守通時と、二艘にて漕出て、敵の船中へ分入ける〈○中略〉蒙古見之、〈○中略〉恠しみける処に押寄せ、大将の船に鑰お掛、即乗移り、切て廻りければ、俄に驚て、先乗せよ、毒面おかけよ、責鼓おうてと雲間に乗入て、伯耆守長刀、通有は大太刀、百人に及者共、此お専度と切てまはる、遠船は是お不知、近船は我船構へして奔きけるに、通有伯父甥、大力大剛の人なれば、身命お捨て戦ふ程に、大将と思しき玉冠お著たるお虜にして我船に乗、敵船に火お懸てあれ共、夷敵は大船なれば難合期、日暮日本の船共漕出ければ、相共に押帰れ共、追懸船もなく、我陣へぞ入たり、二三人虜たるお問ければ、三人の大将の一人也とぞ申ける、