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備前老人物語
岐阜の戦、城のかた、かけまけて、城中へ取こむときに、津田藤三郎といふもの殿したり、門おうちたればこゝあけといふ、番のものども、門おあけなば、寄手付入にやすべき、壁お乗て、入給へといふ、藤三郎聞て、かく取こむだに、口惜きに、壁おのりにげこむこと見ぐるしき事也、是にて尋常に打死すべし、皆々見物せよといひて、馬より下りて、鑓とりなおし、足拍子お踏てたちたり、さても見事なるふるまい哉、かゝる兵お目前に、うたすべきにあらず、いざゝせ給へとて、門おひらきていれけり、後に津田将〓といひしはこれなり、