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伊勢平蔵家訓
堪忍の事
一堪忍とは物事おこらへる事なり、我心に我儘おしたきおこらへとほすべきなり、五常五倫の道も、堪忍の二字お不用してはおこなふ事ならず、其外何事も堪忍の心なくては善事はなす事かなはず、皆惡事おなす、万事皆堪忍お本とすべし、主人の敵父母の敵此二つばかりは堪忍すべからず、いかにしても敵お討べし、是も其敵お討おふするまでの間は、堪忍お専にせざれば討おふする事ならぬなり、能々心得べし、堪忍は心お長くゆるやかにもたざれば、堪忍なりがたきものなり、