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為学玉箒
後篇中
或問、人に対し遺恨、又は不足など出来るは、堪忍せざる故なり、堪忍さへすれば、何事も和合して睦じかるべし、然れども其堪忍がなりがたし、いかゞ心得候はゞ、堪忍なるべきや、
答、堪忍するは重き事なれば、必定といふにはあらず、まづは誰にても人に対し、何事によらずいひぶん出来る時、唯身に立かへりて、我が惡き故といふ事お、真実に弁へなば、いか様の事も堪忍しやすく、いひぶんは出来まじきか、此我がわるきといふ事は、諸人常に口にはいひやすけれども、真底より万事我があしきと知ること甚かたし、予〈○手島信〉近き頃此事お感得いたしたる故、かくいふなり、