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石田先生事蹟
先生〈○石田梅巌〉曰く、われ性質理屈者にて、幼年の頃より友にも嫌はれ、隻意地の惡しき事有しが、十四五歳の頃、ふと心付て是お悲しく思ふより、三十歳の頃は、大概なほりたりと思へど、猶言の端にあらはれしが、四十歳のころは、梅の黒焼のごとくにて、少し酸があるやうにおぼえしが、五十歳の頃に至りては、意地惡しき事は大概なきやうにおもへり、
先生五十歳の頃までは、人に対し居給ふに、何にても意にたがひたる事みればにがり顔し給ふ様に見えしが、五十余になりたまひては、意に違ひたるか、違はざるかの気色少しも見え給はず、六十歳の頃、我今は楽になりたりとのたまへり、
○按ずるに、飲酒お節する事は、飲食部酒篇に』載せたり、