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梅松論

或時御対面の次に、将軍〈○尊氏〉三条殿〈○直義〉に仰られて雲、国お治る職に居給ふ上は、いかにもいかにも御身重くして、かりそめにも遊覧なく、徒に暇おついやすべからず、花紅葉はくるしからず、見物などは折によるべし、御身お重くもたせ給へと申は、我身お軽く振廻て諸侍に近付、人人におもひ付れ、朝家おも守護し奉らむと思ふゆへなりとそ仰られける、此言は凡慮の及ばざる所とそ感じ申されし也、