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応仁記

熊谷訴状之事
近江国塩津の住人、熊谷と雲奉公の者あり、智仁勇の三徳お兼備へて、文武に惑お不懐者あり、当代の御政道の不正事お悲て、密々諫言お綴て、日安の状お進上す、義政将軍被御覧、金言忽に逆耳にや、大に嗔り、其諫る処は、一として道に雖不違、其司に非ずして、法お行ひ諫言お納るヽ条、狼藉是也、史記雲く、其人にあらずして、其官に居す、是謂乱天下とて、所領お没収せられ、熊谷左衛門、其身お追放せられけるぞ、浅間敷けれ、