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明良洪範続篇

秀吉公或時美女お多く集めて、酒宴し給ふ時に、羽柴下総守お召出され仰らるるには、合戦に勝利お得て、如斯美女お集め楽むとの事也、其時下総守刀お抜て、女どもお追まくりければ、秀吉公驚き給ひ、何なる事お仕候哉と有しに、下総守申は、先隻ざれ事には之無候、天下の大敵にさへ御負なされず候御大将の、彼等如き女原に御負成され、天下の政おも御聞なされず、其上御病身にもならせられ候得ば、以の外なる儀にて、右の女の中に、定めて一人か二人敵有べし、夫お存たらば、隻今切殺さんと存、追かけ候得ども、大勢の中にて何れとも知れ難く存候と、諫言申上しに、秀吉公も道理に伏し給ひ、御笑ひ成されしとぞ、