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守国公御伝記

公〈○松平定信〉平居人の己が過失お告ることなく、臣下の諫お奉らざることお深く憂玉ひ、広く直言極諫の路お開んことお欲し、安永八年〈己亥〉正月、自ら求言錄お選著して、群下に示玉ふ、天明三年〈癸卯〉上梓お命じ、先づ一部お完光公に呈覧ありければ、感賞不少、直に白川の教授に下し、殿中に於て開講お命じ玉ひ、教授本田常安〈竜蔵〉正服して講じ、老臣以下諸士正服にて聴聞せり、此書は三代以上より宋明の比迄、忠言直諫の事蹟お抄錄し、自ら警戒の詞お加玉へり、〈後に故ありて、絶板お命ぜらる、〉