[p.0300]
北条五代記

北条氏康と上杉憲政一戦の事
聞しは昔、北条左京大夫平氏康は、弓矢おとりて関八州にまういおふるひ、名大将のほまれおえ給へり、〈○中略〉氏康の父氏綱、天文六年七月十五日上杉朝定と、河越において合戦し、氏綱うち勝て朝定お亡し、其例にかなひ、戦場かはらず、又此年〈○天文十五年〉氏康宿望お達し、勝利お得られし事、弓矢の冥加にかなへる武家くわん東において、名誉の大将とぞ人沙汰しける、