[p.0303]
近世奇人伝

北村篤所
篤所、北村氏、諱可昌、字伊平、即通名とす、近江野洲郡北村の産也、〈季吟法印の氏族也〉仁斎先生の門人にして、京師に住り、嘗て院中に召て、学お問せたまはんため、北面の氏お嗣しめんの、内勅ありしかども、異姓お嗣ことおほりせずと、固く辞し奉りし、されども其人お慕せたまふゆえに、儒服儒巾お制せさせて賜り、しひて召しかば、止ことお得ず、是お著て院中に書お講ず、疾の病(おもく)なりし時も勘解由小路殿おもて、人参と中山といふ御硯お下し給りしは、隠士の面目(○○○○○)と、世に称せり、