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続古事談
二/臣節
昔高麗国王、惡瘡おやみて、日本の名医雅忠お給はらんと申たりけり、此事陣のさだめに及て、さま〴〵に沙汰ありけるに、帥大納言経信申雲、高麗の王惡瘡やみてしなむ、日本のためになにくるしと雲はれたりける一言に、事さだまりて、つかはすべからずと雲事になりにけり、さて返牒いかヾいふべきといふさだめには、此事え申とおさずといふべしとて匡房卿其状おかきけるに、申とおさぬよしおかきおほせずして、二たびまでかへされにけり、第三度に、双魚難達鳳池之月、扁鵲何入雞林之雲、と雲秀句かきたりけるたび、めでのヽしりてつかはされにけり、後に彼国の商人来けるが、此句お紬に書してこそきたりけれ、ひとごとにかくかきてもたるとなんいひける、