[p.0314][p.0315]
閑田次筆

又ある学匠の話に、名聞お好むこと甚しき僧は、女犯肉食よりも遥に罪深し、女犯肉食は罪其身に止る、名聞の罪は他に及ぶ、むかしある相者人に語りて、我男夭死相あり、其月日必死すべしといへり、然るに其期に及びて、常に変ることなければ、彼話お聞たるもの、相の真なきお嘲りしに、一夜とみに死したり、こゝに於て又実に相の疑ふべからざるおおどろきしが、能たづぬれば、己が説の違へるお恥て、窃に其子お殺害したるとなり、吾命にもかへて悲しと思ふべき子お殺しても、其術の名聞お思へるお説給へる、仏の教誡なりとかや、