[p.0317]
近世名家書画談

大雅歿後遺墨お売る事
大雅死後、門人等老師の簏中より多くの遺墨お捜り出せしに、〈○中略〉遽に乞求るもの各報るに多金おいだし、其金集りて七百両にみてり、〈○中略〉因て憶ふに、伊勢寂照寺月仙和尚は、一時画名高く、年ごとに、千金の潤筆お得たりと雲伝ふ、されども遷化の後は、其画価もなく、名も又従て衰へたり、これお譬ふるに、一時権勢お得て気焔の盛んなるも、一旦其衰ふるに至りては、門に雀羅お設るが如し、実に名は蓋棺の後にして定るとやらん、宜哉、