[p.0317][p.0318]
枕草子

雨のうちはへ降るころ、けふもふるに、御使にて、式部のぜうのぶつねまいりたり、例のしとねさし出したるお、つねよりも遠くおしやりていたれば、あれは誰がれうぞといへば、わらひて、かゝる雨にのぼり侍らば、あしかたつきて、いとふびんに、きたなげになり侍りなんと言へば、せんそくれうにこそはならめといふお、これは御まへに、かしこうおほせらるゝにはあらず、のぶつねがあしがたの事お申さゞらましかば、えのたまはざらましとて、返々いひしこそおかしかりしか、あまりなる御身ほめ(○○○○)かなと、かたはらいたく、