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自讃歌

このみみち、中比よりもなお、いにしへざまにおよぶことに侍りけり、しかあるに人のこゝろのせきしなければにや、おの〳〵みづからの歌とのみ思ひて、そのさましらぬもおほかりけるお、かしこきおうかなるおしらしめ、後のよにもうらみあらじとて、身つからよめる歌のなかに、よろしきお十首たてまつらしめ給ひて、心々おみたまひけるに、まことに山人の薪おおへるお、のがれたれども、絵にかけるすがたのまめならず、露おあざむく心のみおほかりけるに、御みづから〈○後鳥羽〉の御うたおも、此御ついでに見せしらせめ給ひけるぞ、御恵のふかさも、すえのよのまもりとまで見えける、〈○中略〉
後鳥羽院
桜さく遠山烏のしだり尾のなが〳〵し日もあかぬ色かな〈○下略〉