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源氏物語
六/末摘花
年比思ひわたるさまなど、いとよくの給ひつゞくれど、ましてちかき御いらへはたえてなし、わりなのわざやとうちなげき給ふ、
いくそたびきみがしじまにまけぬらんものないひそといはぬたのみに、の給ひもすてゝよかし、たまだすきくるしとの給ふ、女君の御めのと、こじゞうとて、いとはやりかなるわか人、いと心もとなうかたはらいたしと思ひて、さしよりて聞ゆ、
かねつきて(○○○○○)とぢめんことはさすがにてこたへまうきぞかつはあやなき、とわかびたるこえの、ことにおもりかならぬお、人づてにはあらぬやうに聞えなせば、ほどよりはあまえてときゝたまへど、めづらしきに、中々くちふたがるわざかな、
いはぬおもいふにまさるとしりながらおしこめたるはくるしかりけり