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古今著聞集
五/和歌
鳥羽法皇の女房に、小大進といふ歌よみ有けるが、待賢門院の御方に、御衣一重うせたりけるおおひて、北野にこもりて、祭文かきてまもられけるに、三日といふに、神水おうちこぼしたりければ、撿非違使、これに過たる失やあるべき、いで給へと申けるお、小大進泣々申やう、おほやけの中のわたくしと申はこれなり、今三日のいとまおたべ、それにしるしなくば、われおぐしていで給へと、打なきて申ければ、撿非違使も哀に覚て、のべたりける程に、小大進、
思ひいづやなき名たつ身はうかりきとあら人神になりしむかしお〈○下略〉