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一話一言
十三
一起証文の字配書様左のごとし、古法也といふ、
梵天帝釈四大天王、総日本国中
六十余州大小神祇、殊伊豆箱根
両所権現、三島大明神、八幡大菩薩、
天満、天自在天神部類眷属、神罰
冥罰、各可罷蒙者也、仍起請如件、
年号何年何月何日 苗字名判〈名乗不書〉
何年の下に支干はなし
宛所
宛名は其日出席の老中大目付両人計也
評定所御用番、御老中御宅、両所之内にて誓詞被仰付、奥御奉公被仰付候へば、其日御城にて誓詞被仰付候也、誓詞の節、消付其席へ出んとする前に、左の薬指お爪際の処お少皮おはねて置、血判する時、其所お小刀の先にて少の突ば、其儘血出てよし、幾度も突は見苦し、鼻紙お弐枚ほどもみて、右の袂に入置、其紙にて指の血お拭事のよし、扠又小刀おさす時に、脇ざしお差たるまゝにて小刀も差べし、差よきとて小刀櫃お上にすれば、脇差に反りお打様にみへてあしき也、心お付べし、血お右の手の薬指に附て、居判の穴の白き処におす也、墨の処に附れば、見えかね候故也、血判して跡にて誓詞おいたゞく人あり、夫はあしき也、
此辺に血な押す
姓名