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安斎随筆
後編七
一誓文状に、伊豆箱根三島大明神お書入る事、貞永式日の起請文に、総日本国中六十余州大小神祇、殊伊豆箱根両所権現、三島大明神、八幡大菩薩、天満大自在天神、部類眷属神罰冥罰各可罷蒙者也とあるお本にして書也、是は鎌倉にて、貞永年北条泰時が評定所にて、理非決断の為に、貞永式目の書お撰て、評定裁断に私曲すまじきと雲誓文也、伊豆、箱根、三島明神、鶴岡八幡、荏柄天神等は皆鎌倉近辺之神社なる故、是等の神名お挙て誓たる也、他国にては其の国中の神に誓ふべき事也、然れども今徳川の御家にては、武蔵国の神おば用ひられずして、伊豆箱根三島三社の神名お誓文に用ひ玉へり、子細ある事なるべけれども、其意味は知らず、〈○下略〉