[p.0355]
世事百談
起請
さて起請文に一枚起請(○○○○)、二枚起請(○○○○)、まだ七枚起請(○○○○)、百枚起請(○○○○)などいふことあり、義経記に、土佐坊が七枚起請かけること見え、後のものながら室町殿日記、豊太閤朝鮮文書にも、七枚起請といふこと見えたり、七枚起請の文おば、かつて友人より得てもてり、文明年間のころ書きたるお写しつたへたるなり、七枚各文章別なり、そは誓言いく通にもしるしたるものなり、おもふにそのかみは尋常のことは一枚にかき、その誓言の重かるは幾枚にも、かへす〴〵書けることゝ見えたり、源平盛衰記に、百枚の起請といふことあり、驢鞍橋に一枚起請、二枚起請、三枚起請といふことも見ゆ、これにて法然上人の一枚起請といふもこれにて明なり、起請といふ文字は、後漢書劉盆子伝に、其余不知書者起請之といふより出でたり、〈○下略〉