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源平盛衰記
四十六
土佐房上洛事
土佐房が被討お見て、清経其暁鎌倉へ逃下て、二位殿に角と申ければ、あヽ九郎は頼朝が敵にはよく成にけり、今は憚るべからずとて、弟に三河守範頼お、大将軍にて、六万騎の兵お相副て可上洛之由被申ければ、範頼既に出立て、小具足計にて、熊王丸に甲持せて、二位殿に見参し給ふ、和殿とても非可打解、九郎が様ににの舞もやと存ずれば、上洛事暫可相計と宣ふ、三河守小具足解置、努々不存其義、可起請仕とて不可奉背之由、梵天帝釈下奉て、百日に百枚二百枚之起請文お書上たれ共、不用して、範頼暫被宥けり、