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増鏡
十七/月草の花
卯月〈○元弘二年〉の十日あまり、又あづまより、ものゝふおほくのぼる中に、おとゞし笠置へもむかひたりし、治部大輔源尊氏のぼれり、院〈○後伏見〉にもたのもしくきこしめして、かの伯耆の舟上へ、むかぶべきよし、院宣たまはせけり、あづまおたちしときも、うしろめたく、ふたごゝろあるまじきよし、おうかならず、ちかごとふみ(○○○○○○)おかきてけれども、そこの心やいかゞあらむ、かくきこゆるすぢもありけり、