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岩淵夜話

一権現様関東御入国の節、夫までは、四け国の御領地にて、御代官被仰付置たる面々の儀、何れも一同に御役御免被遊、当分は伊奈熊蔵隻壱人に、関八州の御代官お可被仰付と有之節、本多佐渡守被申上候は、熊蔵にても、関八州の御代官お隻壱人と有之は如何に候、せめては五三人計も被仰付、御猶と被申上候得ども、一同の御免と有之には、思召有ての事故、御承引不被遊、熊蔵一人〈江〉被仰付候刻、熊蔵に神文お致させ候様にと有之誓紙の前書お佐渡守書候、へと仰に付、硯お取寄、いかゞ認可申と被相窺候へば、初け条に、関八州お我物のごとく大切に可仕事と、御好みに付、其ごとく調へ、次のけ条お被伺候へば、支配方下々の者に、依怙仕間敷事と書せ候得と、被仰候に付、其通書付、三け条目にはいかゞかゝせ可申と被相伺候へば、最早其分にてよしとある御意に有之候と也、