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拾遺和歌集
九/雑
身のしづみぬることおなげきて、勘解由判官にて、 源したがふあらたまの、としのはたちに、たらざりし、ときはのやまの、やまさむみ、風もさはらぬ、ふぢごろも、ふたゝびたちし、あさ霧に、こゝろもそらに、まどひそめ、みなしこ草に、なりしより、物おもふことの、葉おしげみ、けぬべき露の、よるはおきて、なつはみぎはに、もえわたる、蛍お袖に、ひろひつゝ、冬は花かと、みえまがひ、このもかのもに、ふりつもる、雪おたもとに、あつめつゝ、ふみみていでし、みちはなお、身のうきにのみ、ありければ、こゝもかしこも、あしねはふ、したにのみこそしづみけれ、たれこゝのつの、さは水に、なくたづのねお、久かたの、雲のうへまで、かくれなみ、たかくきこゆる、かひありて、いひながしけむ、人はなお、かひもなぎさに、みつしほの、よにはからくて、すみの江の、まつはいたづら、おいぬれど、みどりのころも、ぬぎすてん、はるはいつとも、しら浪の、なみぢにいたく、ゆきかよひ、ゆもとりあへず、なりにける、舟のわれおし、君しらば、あはれいまだに、しづめじと、あまのつりなは、うちはへて、ひくとしきかば、物はおもはじ、