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日本行脚文集

既に天和三亥の春、奥州仙台お首途し、この年の卯〈○貞享四年〉五月まで大旅五年、猶見残し再順二年、元禄二巳の年まで、首尾七年に行脚成就し侍る、凡そ道往三千八百余里、一足も栄耀の馬籠にのらず、一宿借り兼し事なく、一飯に飢たる事なく、一病の障なく、一言の争なく、万満足の功おとり、一生の大願望の本いおとげし事、ひとへに天下泰平、時季満足の旬に、仕合たる果報と独笑して、此記の清書に意お去ざりし、〈○中略〉
元禄三庚午於凉床拭筆 行脚散人三千風綴焉