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磯山千鳥
旅宿
いにしへはいはゆる草枕にて、野にも臥、山にもいこひけむお、貴人は帳の幕など馬につけて、そおもてとりかこみつゝ、一夜おあかしたるものなるお、治れる御代のたふとさは、其草枕も名のみとはなれりしなり、かくてはたごやといふは、かのとばかりの幡お納めたる籠お、はたごといふよりうつりたる名也、今は本陣といひ、脇本陣などくさ〴〵となへたり、またちかき頃、難波講、大船講、関東講など名づけて、その目印お軒にかけたる、また某家中定宿、某用達などしるしてかけたるもあり、