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富士御覧日記
永享四年〈壬子〉九月、富士御覧の御下向に、〈○足利義教〉初の十日、京都出御、同十七日駿河国藤枝鬼巌寺に御下著、雨すこし時雨て、暁方より晴て、月はいり明にて、いそぎ御立、同十八日、府中先小野縄手にして、御輿たてられ御覧じて、前後左右どよみあひ御跡はいまだ藤枝五里のほど、何とはなくつたへ〳〵、山も河もひゞきわたりけるとなん、御著府すなはち富士御覧の亭へ、すぐに御あがりありて、
みずばいかに思しるべきことのはもおよばぬふじとかねて聞しも、