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大内問答
一御酒半に引出物被進時は、何様の物たるべき哉の事、
御酒半に引出物の事、殿中にては一献申沙汰よりも、献々にも進上候、またこんはさめにも進上候、又一両度も進上候、常に御参会の時は、客人、貴人にて候へば、従亭主被進、又亭主、貴人に而候へば、従客人も被進候、然ば五献七献目などに、御酌に而御酒被参候時、二目お被参時可然候、一番には必太刀たるべく候か、馬、太刀なども可然候、加様の時は目錄添候はで、太刀お被進時、馬おと詞にて被仰事可然候、又目錄添候、事も候太刀より前にはいかやうの物に而も不被進候、〈○中略〉
一引出物に具足、並鞍、鐙、同絵以下唐物等可被進候かの事、
具足の事、猶可然候、御成之時も、式御引出物の内、御鐙にても、常にも可被進事勿論に而候、鞍鐙の義、是も同前、えさん物、其外から物等猶に候、同時に従客人から物等、於当座可被進候義はいかゞ、御出之刻左様のから物等おば、御宮下として以目錄可被進候、
一豹虎の皮、於御座敷も可被進候かの事、
豹虎の皮、座敷に而為被進事は見及不申候、左も可在か、無分別候、
一打刀並長具足可被進哉事
打刀の事、一かどの様に候へども、一番には不可然候、先太刀お被参候て、のち〳〵可然候歟、打刀おばつば刀とも申候へば、打刀御出候はゞ、太刀お被添候半事、本義に而候、打刀計は略儀に候、殿中も同前、但御引出物にあらず、唯打刀計進上の事は勿論に而候、次長具足の事は、何々お長具足と可申哉のよし、先々より不審申義候、長太刀、野太刀、小鑓の事か、先年山名左衛門督殿へ土岐美濃守殿より、酒半に長具足被進候に出様の事、祖父貞親に被相尋時、何共無覚悟に而候由返事申候、作去先座敷の傍に便よからん所に立置、案内申され候て可然候か、聢と仕たる法様は不存候、又見及ばぬ由申たる旨しるし置候、以之可在分別候、
一従客人さゝれ候御腰物被進候はゞ、亭主よりも頓而指れ候腰物可被進かの事、
さゝれ候腰物被参候はゞ、此方よりさゝれ候腰物被進候事は、定法にて候、作去其家の重代、又は事により、麁相なる刀などにて候へば、別の刀お可被遣候か、かやうの御参会には、兼々其御心掛候て可然候、可被召遺腰刀おさゝれ候事、故実にて候、
一同時に脇指おも被進事候哉の事脇ざしの事は、隠劔と申て、人に見せざる様に、自然さゝれ候か、殿中などへは努々御さしなき事にて候間、わきざしの沙汰、何共無覚悟候、又不及見候まゝ、兎角は難申候、
一太刀、かたな、銘によりて、引出物に成申さず候哉、同中心きりたる刀、又無銘の太刀、かたな、いかがの事、
銘によりて御物には不成候、銘々の進物には不及其沙汰候か、無銘の事、式々の進物には不成候、常には不苦候、其時は目錄にも持と付候、又中心切たるも同前、式々の引出物には不可然候、