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嬉遊笑覧
八/忌諱
人の許より物贈れる時、其器物に移り紙(○○○)とて、紙おいれ、ことそぎては、つけ木お入ても返す、沙石集に、君に忠有て栄ふるといふ条に、返り引出物(○○○○○)とて、紙一枚おぞ給はりける、これ今いふうつり也、つけ木、古くは硫黄といへり、職人尽に、硫黄箒売あり、二品おうれるなり、これお移りに用るは祝ふ意なり、〈かなはちがへども、音のまがふ故なり、又今祝おいわひと、俗文に書は、いはひにては、位牌にまがふとなり、〉うつりとは名残の意なるべし、