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宗五大草紙

折紙調候様の事
一先折紙のたけの高きは狼藉也、公方様へは、常々公家、門跡、大名衆は備中紙、小高檀紙お一重二に折て御用候、御供衆同前、大かたの人は小引合、杉原など被用候、公方様より禁裏様へ御進上之日錄は、大高檀紙一枚にて候、管領の御母より公方様へ参候折紙、大高檀紙一枚にて候、又細川殿より進上之目錄同前、彼御一人にかぎり如此、折紙の調様、摂家より公方様への御折紙には、進上は候はで、色計あそばし候て、以上と候、清花も此分に而候、余の公家衆も進上は候はで、以上之奥に実名おあそばし、そばに上文字お御付候、縦ば如此、実名上、又は門跡も進上は候はで、以上の奥に何院と計候、是は門跡の事候、武家は進上とはしにかきて、以上の奥に名乗おかき、名字官途受領おも書候、又土岐殿一人名乗おばかゝで、土岐左京大夫と候、又私にては色計書て、以上、おくに各乗お書、かたに名字官途など書は、一段賞玩の義也、又受領にても官途計にても書候、是も賞玩、是は賞玩ながら前の程はなく候、又常に等輩には、隻以上と計書候、色はいく色も同前ひろひて可書、又人の内衆主人へ参候折紙、進上と書候、公方様へ武家進上の書やう同前、
一折紙に調候物の次第、大内殿より故勢州へ被尋候時、しるして被遣候分、公方様へは御太刀一腰、〈銘〉御馬一匹、〈毛付印付〉万匹、〈此字成べし〉又千匹、五千匹、私ざまにては御の字あるべからず、又太刀の銘は大方太刀のわきに付べし、又書状には用脚の異名お書候、折紙にはたゞ万匹千匹と有べし、又御太刀一腰、〈銘〉御絵一幅、〈筆付べし数不定〉御香合一、〈堆紅以下可付〉金襴一端、〈色可付〉段子繻子〈数不定〉数多くば何端とて色色可付、此外ぢんのほた、から糸、御花瓶胡銅一、御香合一、御盃にすはる御盃の数不定、何にても堆朱堆紅など付べし、公方様へ進上の外、御の字有べからず、公方様へも金襴段子などやうなる物に、御の字は不書候、公私共に太刀そひ候はゞ、一番に太刀お書べし、
一御太刀一腰、〈銘〉御弓、征矢、御鐙一領向甲、〈糸色付べし〉御馬一匹、〈毛付印付〉公方様へ此分、〈○中略〉
一女中へ進上の折紙、調様、万びき、又は千びきなど有べし、又名乗は、上の字おかなに、下おばまなにて書、名字、官途も、かな、まなお交べし、私にて女房衆への折紙此分也、又ほん、かうばこ、どんす以下も、かなに書べし、だんし十帖、引合杉原も、十でうとかくべし、おりたる以下の折紙おも、まなおまぜてかくべし、一公方様へ折樽以下進物書やう、御盃台、〈絵様可付、数不定、〉御折十合、〈数不定〉押物五合、〈数不定〉御樽十荷、〈数不定〉京にては柳なれば柳何荷共書、又御樽、〈天野何荷共雲〉是も私へならば、御字あるべからず、是も女中へはかななるべし、
一魚鳥お折紙に調候は、大かた鳥前、魚後に書候、又大内殿より金仙寺〈○伊勢貞宗〉へ、精進と魚とお書まぜて、進上の時は、如何と尋られし時、返事に、さのみ見及候はず候、但精進の物は前に候はんずるかと候し、又常に私にて昆布おそへ候事、きとしたる時は見及候はず候、又常に進上候魚鳥の数の事、是又大内殿より故勢州へ被尋候時、しるし被遣候分、鳥には白鳥、鵠、雁、鴨、雉、鶴、雲雀、青鷺、五位鷺、鶇、鴫、鶉、四足には兎より外は参候はず候、魚には鮒、同鮓、鯉、鮎、同鮓、鯛、鱈、鮭、鱧、鯨、鰤、鱶、鱓、海鹿、鮫、鱒、鱸、鯇、塩引、蛸、細鯉、来々、海老、擁剣、生海鼠、振海鼠、大蟹、煎海鼠、海月、海鼠腸、海糠、老海鼠、烏賊、筋子、真鰹、波良々子、細螺、貝蠣、貝蚫石花蛤、辛螺、栄螺、ばい、熨斗蚫此外もあるべし、